ポップな単身 引越
この牙城を攻略できれば、北米市場は日本車メーカーの真の意味でのホーム市場となり、収益的にも「キャッシュカウ(金のなる木)」であり続けることが可能となるでしょう。
伝統的なフルサイズのフレーム付きピックアップは、年間240万台以上の販売を続けており、米国では最も安定しかつ収益性の高いセグメントです。
米国人の「現代の馬車」と呼ばれるピックアップは彼らのライフスタイルや価値観と結びついた商品であり、米国メーカーの牙城となってきました。
トヨタ自動車は1998年に「タントラ」でこの市場に参入を果たしましたが、伸び悩みに直面しました。
一方、コーンCEOで復活した日産自動車は、2003年に本格的な商品となる「タイタン」で参入し、一定の成功を収めたと見られますが、目論見通りの結果は生み出せていません。
日産自動車は、商品競争力の高いピックアップ新商品を魅力的な価格で提供すれば、米国メーカーの消費者から多くの需要を獲得できると踏んだわけですが、意外なほどに、米国の消費者は自国ブランドへの高いロイヤルティを崩しませんでした。
フォードやシボレーの伝統的なトラック商品に対する保守性は意外なほどに高かったのです。
また、単に商品性だけではなく、ブランドや販売網、グラスルーツな活動など、地道な努力が米国メーカーの牙城を攻略するには必要であるということが認識されました。
過去に輸入モデル「T100」での挑戦が不発に終わってしたトヨタ自動車は、1998年に現地生産モデル「タントラ」で米国ブランドとの差別化を図る戦略をとっていました。
あえて、全面対決を避けたわけです。
同時に、苦手とする中西部・南部のディーラー強化やアウトドア・スポーツのズボンサードなどで、よりピックアップ・ユーザーに近いトヨタブランドの育成を地道に続けてきました。
そしてトヨタ自動車は、テキサスに新工場を建設し、2006年秋に新型「タントラ」を投入することで、本格的な米国メーカーの牙城攻略への宣戦を布告したのです。
これは、日本車メーカーの米国メーカーとの最終戦争であるとともに、持続的な成長と、真の意味での米国現地会社としての市民権を獲得するための戦いと言えるでしょう。
「タントラ」は早期に25万台規模に成長する可能性が高く、日本車のフルサイズ・ピックアップでのセグメントシェアは20%近くへの上昇が可能でしょう。
日産自動車の「タイタン」はしばらく守勢に回る見通しですが、2009年に控えるモデル切り替えで挽回に転じる可能性が高いと見ています。
トヨタ自動車にとって、「タントラ」はいくつかの重要な意味を持っています。
第1に、米国のコア市場であるフルサイズ・ピックアップの収益化を実現できることです。
輸入車である「T100」、現行モデルの「タントラ」と、トヨタ自動車は、長期間、当セグメントに取り組んできましたが、米国メーカーの持つ規模の力を克服できず、本格的な収益化には至っていません。
第2に、中西部や南部の市場での総合的なシェアアップが期待できることです。
本格的なピックアップ市場への参入は、これまでトヨタ自動車の存在感が乏しかった州でブランド活性化を促す意味があります。
当該地域ディーラーは確実にコミットメントを拡大し、トラックのみならず、乗用車セグメントにおけるトヨタの成長へと波及効果が期待できるのです。
欧州市場は、北米と同様に大規模な新車市場を形成していますが、大きな特徴は市場の多楡既と市場シェアの分散にあります。
世界最大の乗用車市場はどこか、との問いに対する正解は、米国市場ではなく、欧州連合(EU)なのです。
しかし、単一な市場を形成している米国とは対照的に、EUでは、5大国を中心に、ドイツ・フランス・イタリアの主力自動車メーカーがホームマーケットで独特の存在感を誇示しており、地域多様性がこの市場の特徴と言えるでしょう。
ナショナル・チャンピオンと呼ばれるメーカーがホームマーケットで多大な市場シェアを持つというのが欧州市場では一般的だったのです。
このような市場特性が生まれた背景には、各国での価格や税金格差が極端に大きかったこと、日本車などの輸入車に対する数量規制が実施されてきたこと、ブロック・エグゼンプション(独占禁止法一括適用除外)と呼ばれる競争排除の影響などが挙げられます。
自由競争への規制が、地域の独自性を残すだけでなく、ホームマーケットで高い収益性を誇る欧州主力メーカーが、母国市場以外では叩き売りをするといった複雑な競争状況を生み出していました。
しかし、欧州市場は大きな転機を迎えています。
近年は自動車価格差の是正が進められ、価格の下方収斂が続いてきました。
ブロック・エグゼンプションは2003年に廃止され、本格的な流通自由化の時代を迎えています。
過去の秩序の崩壊と、新たな勢力としての日・韓自動車メーカーの台頭が起きています。
欧州市場は、自動車メーカーにとって最も収益性を確保しづらい大激戦の市場と化しています。
加えて、近年においては、EU圏の拡大のみならず、中・東欧経済圏の成長に伴うダイナミズムが生まれています。
最も過酷ながら、非常に高い成長力を持つのが欧州市場です。
日本車メーカーにとって西欧市場の攻略は苦難の歴史でした。
成功を収めた北米市場とは対照的に、日本車のブランド力は低く、商品自体もあまり魅力的であったとは言い切れないでしょう。
欧州市場は必ずしも日本車メーカーの成長の中核戦略には含まれていなかったのです。
1990年代末の市場自由化を契機に、日本車メーカーは拡大戦略に転じますが、為替変動や競争激化の煽りを受け、収益的に非常に厳しい状況に置かれました。
筆者の試算では、最悪期には年間数千億円もの赤字を計上したと考えられます。
また、現地での生産工場がコスト競争力に乏しい英国市場に集中していたことも、欧州単一通貨ユーロ導入の際の為替変動で多大なダメージを受けることになります。
しかし、日本車メーカーの欧州事業は現在、力強く回復を遂げています。
欧州事業は一時の混迷を抜け出し、一定の収益性を維持できる事業領域への転換に成功しつつあります。
ディーゼルエンジンの強化、現地生産体制の拡充、流通改革など、過去数年間の経営努力が実を結んでいます。
ディーゼル戦略の加速化が同地域での成長を促進する公算が大きいと考えられます。
日本車の西欧市場シェアは上昇が続いています。
2000年の11%のレベルから、2005年は13.4%に達し、今後も上昇が期待できるでしょう。
小型車セグメント、スポーツ・ユーティリティ、MPV(ミニバンなどの多目的車)での成長に加え、出遅れ気味であったディーゼルエンジン強化が明らかに奏功しています。
成長は西欧のみならず、北欧や中欧、さらにバルト3国やロシアなどの新興経済国でも成長力を強めてきています。
燃費性能の高さが評価され、ディーゼルエンジンは欧州で非常に高い普及率となっています。
2005年でのEU乗用車販売台数の2台に1台がディーゼル車です。
ほぼゼロという日本の実情から見れば驚くほどの違いがあります。
EUでのディーゼル比率は、55~60%程度まで拡大する可能性があります。
欧州の自動車販売の今後については、環境規制の動向とディーゼルエンジン普及への影響を抜きには語れない状況となっています。
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